硫黄島からの手紙 [映画感想 あ行]
映画タイトル:硫黄島からの手紙
初公開年月 :2006/12/09
監督:クリント・イーストウッド
脚本:アイリス・ヤマシタ
出演:渡辺謙 二宮和也 伊原剛志 加瀬亮 中村獅童 他
■2006.12.10(日) 本日の一言■
昨日、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』を観にいってきた。
まずはあらすじから。
時は1944年6月、日本の戦況は悪化の一途をたどっていた頃。
水も悪く、硫黄の匂いがたちこめる島、硫黄島だったが、ここがアメリカに落ちれば
東京への攻撃がたやすくなることは明快であるがために、この島は最重要拠点であった。
その島がもうすぐアメリカに総攻撃を食らうとわかった時、日本軍は、硫黄島へ
新たな指揮官、栗林忠道中将(渡辺謙)を派遣する。
アメリカ留学の経験を持つ栗林は、無意味な精神論と暴力の続く軍の体質を改め、
合理的な体制を整えようとしていた。栗林の進歩的な言動に古参将校たちが反発を
強める一方、オリンピック馬術競技金メダリストの西竹中佐(伊原剛志)のような
理解者も増え、又、上官の理不尽な体罰に苦しめられ、生きて日本に戻ることはないと
絶望していた下級一兵の西郷(二宮和也)は、栗林の出現から、かすかな希望を見出す。
栗林は島中を巡り歩き、兵も物資も大量に持つアメリカ軍を迎え撃つために、
島中に地下要塞を構築し、戦いの準備を始める。
そして、いよいよアメリカ軍が、硫黄島に上陸を開始しだしたのだった・・
それでは感想である。
★以降、ネタバレもありますよ★
さて、世間では言わずと知れた『父親たちの星条旗』の2部作目にあたる『硫黄島からの手紙』。
若い頃は悲しい映画を観ても、泣かないで有名だった私であったけれど寄せる
年波のせいなのか、公開前からバンバンと流れていた予告編を観た時点で、
涙腺崩壊寸前だった事実をふまえて、映画が始まる前から、ハンカチを準備し、
それは大いに活用された。( ̄-Å)
それにしても、戦争映画というのは感想を書くのが難しい。鑑賞から24時間たった今でも
なかなか入力の進みが、よろしくないのだ・・(--)
入力しては消し、消しては入力の繰り返しで正直に言えば、困った状態なのである。
ウーーム(--|||)
さて、出演者に渡辺謙が出演している以上、主役と物語の中心にすえられるのは栗林中将で
あると思いながらの鑑賞開始であったが、映画の中心に据えられているのは、
下級一兵の西郷(二宮和也)だった。西郷は本国ではパン屋で、もうすぐ子供が産まれるで
あろう時に赤紙が届き、硫黄島へと配属される。妻(裕木奈江 )と彼女の腹に宿る子供に
向かっては「必ず生きて戻る」と言いはするが、戦闘前から絶望的な日々を経験し、とても
生きては戻れまいという思いにかられだしている。その彼が戦闘前、戦闘中、戦闘後を通して、
諦めから栗林中将の出現で希望をもち、希望から次々を死んでゆく仲間を見て、本当の絶望を
味わい、絶望から決意し行動を起こす過程が描かれる。その合間に栗林中将の行動、
彼の子供に対する思い、良き時代への去来、そして彼に賛同していた西竹中佐(伊原剛志)の
最後まで生きて戦うという思い、また栗林中将に反発をし単独行動をとり、
アメリカ兵を巻きぞいに潔く散ると豪語した伊藤中尉 (中村獅童)のなれ果てを
神の目という位置で、観客は向き合うことになるのだ。
・・・まずは、この映画は戦争映画である以上、決して観ていて楽しくはないし、辛く、理不尽で
やりきれず、そして悲しいことを明記しておく。なぜならここに出てくる登場人物は、
誰ひとり自分の最後に思うところの願いを叶えることが出来ないからなのだ。
潔く散ると豪語した伊藤中尉 (中村獅童)は死にきれず捕虜。(--)<ウウ・・思ったとおり・・
西竹中佐(伊原剛志)は、最後まで生きて戦うことを望んでいながら、目を負傷し自害の道を
歩まざるえず、(TT)<そんな・・そんな・・そんな・・と私の口は渇き・・
元憲兵、清水 (加瀬亮 )は恥を忍んで軍を裏切り、白旗をかかげて投降するも、アメリカ軍に
射殺され・・・(><)<オイ!捕虜にするんじゃないのかぁあああ!!と私は悲鳴を上げ。
栗林中将(渡辺謙)は、消耗戦の末、水と武器を失い、敵へと切って出て負傷、
・・そして「硫黄島はまだ日本か?」と西郷(二宮和也)へ尋ね「・・日本であります」と
聞いて自害。(#><|||)<もう・・いいです・・いい!沢山だ!おしまいっ!
エンディングロールを流してくれっ!と、バタバタ足掻きそうになり・・・・
そしてと西郷(二宮和也)は・・・・・・初めてアメリカ兵に向けて怒りにまかせて
シャベルを振り回し。(@@|||)<あぁ!あぁ!あぁ!あああ!おしまいにしましょう!
西郷さん・・あなただけでも生きてくれ・・頼みます・・と、私は土下座をしてもいいような
気持ちになって画面に向かい、手を合わし願わずにはいられなかったのだった。m(_ _)m
次に俳優の感想。
まずは、栗林中将を演じた渡辺謙。
特に不平を申し上げることのない、力をいれつつ自然体の演技ぶりには
頭が下がるばかり。ウマイのである。渡辺謙だとわかりつつ、映画を観ているときは
栗林中将を観ているのだ。なかなか、こういった俳優さんはいないな・・と思う。
大きく拍手して演技を誉めたい!( ̄ー ̄)//パチパチパチパチ!
次、下級一兵の西郷を演じた二宮和也。
映画の中で一番、出番の多い役を演じていた。ジャニーズだったので、正直あまり
期待をしていなかったのだが(偏見ですね?ハイ)なかなか、生を諦めて、卑屈になっている
兵隊さんをしっかり演じていたと思う。次回作、観る機会があれば、見てみたいという
気持ちにさせてもらった。賛否両論あるけれど、私は良い演技だなと思う。
次、西竹中佐を演じた伊原剛志。
なかなかの演技ぶりなのに、出番が少なくて残念である。
見せ所は乗馬のシーンといったところ。
ウマイ俳優さんなので、今、思うともう少し演技をみていたかった。
次、単独行動をしたのち、捕虜になる伊藤中尉を演じた中村獅童。
イヤぁあな役なのだが、そのイヤさ加減が中途半端な役どころ。
キレた役など演じると、本当にウマイのに少々、もったいないと思ってしまった。
次回作に期待したい。
最後に映画の全体的な感想を書いておこう。
観終わって、本当にやりきれない思いを味わった久しぶりの映画である。
このやりきれなさは、いつ以来かと今、思い起こしてみると『戦場のピアニスト』を
観て以来だなと思う。あのときも「良い映画ではあるけれど・・やりきれない気分だ」(TT)
と思ったものだ。(あ・・今、思うと『ミリオンダラー・ベイビー』も良い映画だが、やりきれなかった)
今回も観てよかったな・・という思いはある。かなり辛かったのも事実だが、
映画にしてもらわなければ、蓋をしがちで、多くが語られない太平洋戦争のことについて
一部がフィクションであるにせよ、見ることも知ることも出来なかっただろう。
『父親たちの星条旗』ではこの戦いで有利とされた戦勝国のアメリカの光と影が撮られた
社会派の作品であり、『硫黄島からの手紙』では敗戦国である日本を卑下することなく、
出来るだけ事実に基づきながら、兵士たちの生と死を撮った作品だと思う。
事実に近いものとして一度は観ても損はないだろう。
襟を正してきちんと生きようという気持ちにさせてもらえる。辛いが、しかし良い映画であった。
うーん、時にこういう映画は気合を入れてみようと思わないと、なかなか見れない
ものですね。「辛いが、しかし良い作品であった。」というの、よく分かりました。
そしてこういう映画も時には見るべきなのですよね。
戦争は起こしてはいけないですね。これだけ体験者が語り、小説や映画に
なってるのにも関わらず、それでも終わらない。ああ。。。
ジャニーズは偏見で見ちゃうけど、けっこう芸達者が多いのかもしれませんね^^
by のんたん (2006-12-12 09:41)
これはゼッタイ見たいと思ってます。こういうのの内容はツライけど
語りついで行くべきものだとも思います。
戦場のピアニストをみたときもものすごい良かった・・・けどものすごい
やりきれなさを感じました。
映画にしてもらうことで、知る「きっかけ」になると思います。
それぞれの俳優さんたちにも注目してみてみたいと思いました。
by れいりん (2006-12-12 22:53)
>noricさんNiceありがとうございます。
by まなてぃ (2006-12-12 23:36)
>でぃーじぇーさんNiceありがとうございました。
by まなてぃ (2006-12-12 23:37)
>のんたんさん。コメントどうもありがとうございます。
二宮和也 ジャニーズというわけで、こんなに芸達者な俳優の中で
演技できるのかぁ?大丈夫かなぁあ?懸念していましたが、
いや、なかなかどうして、ちゃんと演じられていたのでびっくりしましたね。
トシちゃんやマッチ(歳がバレますかね・・笑)の演技を思えば夢のような
進歩でしたよ。(笑)
by まなてぃ (2006-12-12 23:44)
>れいりんさん、コメント、どうもありがとうございます。
本当に『戦場のピアニスト』は、良い映画であるにもかかわず、
私はドヨォオーンとした気持ちで映画館を後にしたことを思い出しますね。
今回も、物語がまぁ辛いなかで、やはり見所は、日本を代表する
俳優さんたちの名演技でしたね。
このブログでは書き忘れてしまったのですが、元、憲兵隊の役をやっていた
加瀬亮の演技は、初めて観たのですが自然な感じで、とてもよかったです。
物語は悲しいけれども、演技を楽しむにはお薦めな作品ですよ。(^^)v
by まなてぃ (2006-12-12 23:55)
先日、自分の息子が通っていた長崎海星高校に渡辺謙さんと伊原剛志さんが来られて、原爆に遭った長崎で戦争の意味を知ること、なぜ長崎なのか、を熱く語っておられたようです。
by カウンタック (2006-12-13 16:15)
>カウンタックさんNice&コメントありがとうございます。(^^)
重いテーマを語りにきたのですね。しかし!
いいですねぇ!高校に伊原さんと謙さんがきてくれるなんて。
羨ましいです!あと22年くらい・・・遅く生まれてきたかった!
なーーんて思ってしまいましたよ。(^^;;;;;)
by まなてぃ (2006-12-16 19:17)
こんにちは。まあ、戦争映画はどれもやりきれないものですよ。「お国のために」という愛国心をあおる映画でなくて、一若者の目からそれに疑問を投げかけるような作りが良かったと思います。それを二宮君があまりに上手に演じていたのでビックリでした。多分、これまでで一番日本を正しく描いたアメリカ映画じゃないでしょうかねえ。
by (2006-12-19 08:26)
>こんばんは、katoyasuさんNice&コメントありがとうございます。
レスが遅れて、本当に申し訳ないです。
いやはや、久しぶりの戦争映画だったので、やりきれないものという
のは百も承知ではいたのですが、覚悟がたりなかったですかね・・(^^;;)
二宮君の演技は、実のところ私もかなり危惧していたのですが
なかなかどうして、うまかったですよねぇ。
ジャニーズもやれんじゃん!みたいな気分がしましたね。この映画なら
アメリカでもヒットして欲しいですね。
by まなてぃ (2006-12-22 00:07)
お邪魔します。
映画を見るまでは〜、と我慢していたので、まなてぃさまの感想がやっと読めて嬉々としております。
しかしふりかえると、あまりにノーテンキな我が感想。
ちょっとヤバいかな、ネジとんでないかなと不安になりました--;
ウチは明日で幕ですが、まなてぃさまにはたいへん良くしていただきました。ありがとうございました。
では、良いお年を!
by tamapin (2006-12-30 12:13)
>びんさん、こんにちは。(^^)コメントありがとうございます。
と、書いて、えー!びんさん、ブログを閉鎖してしまうのですか・・(TT)
と、少々、寂しく思ってしまいました。
書いてくれたコメント、ありがとうございました。私自身、知らない情報も
満載に書いてくれたので、嬉しかったですね。
それと、びんさんのブログの力の抜けたイラスト・・好きでしたね・・・
また機会があったら遊びにきてくださいまし。
心よりお待ち申し上げております。(^-^)
良い新年をお迎えくださーい!
by まなてぃ (2006-12-30 14:14)
こちらにも、遠征して参りました。(^_^)/
戦争映画って、本当に感想を書くのが難しいですよね。私は 一週間位
ぼ~っと 腰が抜けてしまいましたもの。
そう言う割に、更新した記事は “ノーテンキな”感想に なってしまって
ますけれど。。。
でも、こちらで あやふやだった知識も 復習できました。いっぱい書いて
下さって、ありがとうございました。m(__)m
ところで…二宮クン☆←“ジャニーズだったので、正直あまり期待して
いなかった”…のは、まっこと 偏見ですぞよ。(I am…一応 ジャニFAN☆)
臆病・卑屈になっている様を よく演じてましたよね。今後も 要チェック
です~☆
by 流星☆彡 (2007-02-03 20:57)
>流星☆彡さん。こちらにまで遠征してくれて本当にありがとう。
まずはNice&コメント&TBをありがとうございました。(^^)
いやはや・・戦争モノ、政治モノというのは、それぞれ思うところが
ある読者が多いので、気をつかってしまいますよね。
しかし本当に二宮君には脱帽でしたね。
こんなに!演技ができるのかぁああ!あ、でも演出家の蜷川さんと
仕事ができるくらいだから、演技はうまいのか・・しごきに耐えたか?
と、後々、この映画を語る時にでてくるのは二宮君のことですね。
次は明るい映画に出てもらいたいかな。
コミカルな役とか・・ね。
by まなてぃ (2007-02-04 18:35)