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カポーティ [映画感想 か行]

カポーティ コレクターズ・エディション

カポーティ コレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2007/03/16
  • メディア: DVD


映画タイトル:カポーティ
初公開年月 :2006/09/30
監督:ベネット・ミラー
脚本:ダン・ファターマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン  キャサリン・キーナー 
   クリフトン・コリンズ・Jr他

■2006.10.16(月) 本日の一言■

昨日は、フィリップ・シーモア・ホフマンがアカデミー主演男優賞を受賞した作品
『カポーティ』を鑑賞した。
この映画の主人公となるトールマン・カポーティという人は、『ティファニーで朝食を』の
原作者である。しかし、この頃の年代の作品や時代背景についてはウトイ私はネットで
検索する手間をはぶきながらも予備知識が欲しくて、この時代と映画作品がまさに
青春だった母に「カポーティっていう人を知っているか?」と尋ねた。
すると、母は『ティファニーで朝食を』のタイトルを口にし、そしてかなり厭という表情を見せて
「『冷血』を書いた作家よ」と言った。
そのあまりに厭という母の顔に、私は驚いて「そんなに妙な人なのか?」と再び尋ねると、
「凶悪殺人犯の再審の弁護士を用意したりして、味方ヅラをして『冷血』を書いた作家・・
きっとイヤな男よ」(-○-#)と とりつくす暇もない。(^^;;;;)
そうか・・イヤな男なのか・・しかしあまり驚くことでもない。
フィリップ・シーモア・ホフマンが、今まで演じた役で、私が知っているモノといえば、
『レッドドラゴン』の気弱な性格をもちながら狡賢い新聞記者や、
『MISSION: IMPOSSIBLE III 』の凶悪な武器商人であったからだ。
今回も彼のその「厭、嫌、イヤ、イヤァアア」と皆が思うであろうその役どころの演技が
観たくて、私は『カポーティ』を観にいった。逆に彼が出ているからこそ観にいったと
いってもいいのだ。その期待はかなり大きい。(^^)v

では、あらすじである。
1959年、カンザス州の田舎町で一家4人惨殺事件が発生した。
新聞でこの事件を知った、作家カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は興味を覚え、
この事件の内情を本にできないかと、友人の作家ネリー(キャサリン・キーナー)を同行して、
すぐさま現地へと取材にでかけ、事件現場や関係者を訪ねて回る。
ほどなく2人の容疑者が逮捕されると、カポーティは自分の有名小説家の地位を利用し、
警察や彼らへの接近を試み、犯人たちに近づけるようになると今度は自ら再審の為の
弁護士を準備して犯人たちの信用を得るようになる。
こうして面会を重ねるごとに犯人の一人、ペリー・スミス(クリフトン・コリンズ・Jr)の
告白に創作意欲を刺激されるカポーティだったが・・。

それでは感想である。
★以降、ネタバレもありますよ★

トールマン・カポーティはイヤぁな奴・・というフレこみで鑑賞を開始した『カポーティ』。
そして実際、鑑賞をしてみたが本当にイヤぁあな男であったし、その表現はオープニングから
エンディングまで炸裂しまくる映画でもある。
そもそもウサばらしに社交界の場で酒を酌み交わしながら、お姉言葉で笑うに笑えない
ジョークを飛ばし、自分の見栄のためにチップをはずんで、美辞麗句とわかりきっているのに
それを友人ネリー(キャサリン・キナー)に聞かせて喜ぶような男である。これらが画面を
占拠する段階で、まず観客の大半の人間は彼を好きになることはないな・・と思わせる
展開だ。
彼が真摯であり続けたものは、小説『冷血』に必要な取材のときばかりで、
一般の人間であれば銃で残忍に頭を打ち抜かれた4体の遺体など想像するだに
恐ろしいものとして受け止め、わざわざ棺桶を開けてその遺体を検めることなどしない
だろうが、彼は、その恐ろしさを内に完全に封じ込めて、書くために無残な遺体4体を
すべて眺めるのだ。
また、その取材に対する熱意は尋常ではなく、自分の名声と金を利用する、
信頼をよせてくる犯人に平気で嘘をついたりと手八丁口八丁であり、
取材時間欲しさから、犯人たちの再審の弁護士を自ら準備をし、警察からの反感も
何処を吹く風といった具合なのである。
映画はこういったカポーティの嫌らしいまでの熱意とそして取材を終えたあとに、
ポロリとこぼす彼の人間らしい独り言、友人ネリーに語る犯人に対する本音、
そして出版社にもらす作家としてのエゴと願いによって構成されていった。
しかし、私からしてみるとカポーティが取材後、ポロリとこぼす人間的感傷のセリフは、
それが彼の本音であるにせよ泣き言のように響いて、共感できるモノは皆無に等しかったし、
カポーティが取材した犯人の声に対しても共感を覚えることはない。
犯人たちはカポーティに向かい切実に頼むことといえば「どうすれば死刑から逃れることが
できるのか?、死刑を回避するために弁護士を準備して欲しい」なのである。凸(--#)ブチッ
このあたりのこと(カポーティと犯人の会話)は、現実ではもっと語られていることも多いの
かもしれないが、この映画のみで彼らの思いを突き詰めてゆけば、犯人たちは死刑にさえ
ならなければ良いという身勝手な考えがあり、その唯一の頼みの綱がカポーティだけだと
知って、彼をアミーゴ(友人)と呼ぶだけのような気がしてならない。それにつけいり取材を
続けるカポーティも相当な悪であるが、この犯人に対しても同情の余地はないと思う。
自分が死にたくないと思うのであれば、何故、人を殺したのか。と問いてやりたい気分になる。
それだけに、犯人たちの死刑が確定し、刑が執行されるのを見届けたカポーティが感傷的に
なり、友人ネリーに電話で「彼らが死んでしまった」と急に善人ぶり嘆くことに対して
彼女が冷たく言い放つ「だってあなたは助ける気がなかったじゃないの」というセリフは、
なかなか的を得た厳しいモノで、唯一この映画で私が共感できるものであった。

次に俳優の感想。

この映画を観るきっかけになったカポーティを演じた、フィリップ・シーモア・ホフマン。
彼が賞をとらなかったら、この作品、日本に果たしてきてくれたか?は疑問であったが、
主演賞をとるだけあって、嫌味な男がクネクネとした身のこなしをし裏声だし、
イラつくとヒクヒクと動かす微妙な指の揺れ。など、細かい演技にまで気を配っていたのでは
ないかと思う。
アップになっても演技をくずさず、ウマイなぁ・・・の一語である。
今まで2作しか彼が出演している映画は観ていないが、今までの役どころとは、
まったく違った顔を見せ演じてくれたおかげで、演技に関しては非常に満足がいった。
外見はまったく好みではないのだが、その演技ぶりに次回作も是非見たいなと思わせて
くれる俳優さんだ。今回も満足!ごちそうさまである。(^^)

次、この凶悪殺人事件の犯人の一人、ペリーを演じたクリフトン・コリンズ・Jr
フィリップ・シーモア・ホフマンの怪演の合間にみえる、犯人独特のすがるような
黒い瞳が印象的な俳優さんである。静の演技が多く座ったシーンが多くて、
もっと脚本が犯人に見せ所を多く作ってくれれば彼の演技が多くみれてよかったのにな
とは思わずにはいられない。次回作に期待である。

他にカンザスの警察署長の役にクリス・クーパー、カポーティの友人であり作家の
ネル・ハーパー・リー にキャサリン・キーナー といぶし銀でウマイ俳優を
配している。この映画に大根は一人もいないので、脇役にも目を配ってみるのも
良いのではないかと思う。

最後に映画の全体的な感想を書いておこう。

決して明るい話でもないし救いがある映画ではないが、黒の光沢を味わうような
犯人のエゴと作家のエゴが垣間見れる作品であることは間違いない。
後ろ指をさされようと非難を受けようと全ては書くために『冷血』を完成させるために・・
の思いに囚われた作家の苦悩こそは理解できぬが情熱は充分、感じ取ることができる。
しかし、うーん・・私はフィリップ・シーモア・ホフマン観たさに観にゆき、これはこれで
満足であった。だが、この俳優さんが好きでもなく、『冷血』という本に興味がないので
あれば「おもしろかったよぉ」「観て観てぇええ!」と強くお薦めすることはできない作品だ。
暗いし・・エゴ丸出しだし・・死刑執行のシーンはあるし・・
最後はその後のカポーティの不幸な晩年がキャプチャーで語られるしで、
鑑賞後「お昼もしくは(夕飯)どこに食べにゆくっ♪」という気分に切り替えるには
時間がかかると思う。
私は観終えた後、茶もせず「帰ろ・・・」ソソクサ((((((m-_-)m|家|  と帰路についた。
よってデートなどで観るには、もっての他の作品である。止めておいたほうがいい・・
この映画は暗い情熱を感じたい方、フィリップ・シーモア・ホフマンを観たい方に
限定してお薦めする。深淵の世界を味わってもらいたい。o(≧~≦)o


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コメント 8

こんばんは。この映画はかなり前に観ました。カポーティ自身がどういう人だったのかよく知らなかったので、ホフマンがカポーティに似ているのか良くわかりませんでしたねえ。『冷血』は映画化されているようです。また『ティファニー・・・』を彼が書いているとは知りませんでした(映画検定の問題に出て間違えてしまいました・・・)。彼の作品ではあと『アラバマ物語』という傑作があります。ちなみに、全米では最近もう一本カポーティの映画が公開されたようです。
by (2006-10-16 20:44) 

とりあえず・・・いま本の方を読んでます。
by (2006-10-16 22:26) 

のんたん

うわー、きっと見ないだろうなあ。。。。(笑)
台湾では上映予定がなさそうです。
いやな金髪デブって、そういうイメージ(F.S.ホフマンのせいで?)
でしたけど、カポーティ本人の写真は、この本のものなんですね。
そういえばF.S.ホフマン、セント・オブ・ア・ウーマンに出てましたよね?
多分あの学生役だった人だと思う・・・ここではどうってことない役ですが
アル・パチーノが素敵でした。すごかった。迫力でした~!
by のんたん (2006-10-17 04:33) 

まなてぃ

>noricさん、Niceありがとうございます。(^^)
by まなてぃ (2006-10-17 18:35) 

まなてぃ

>こんばんは、katoyasuさんNice&コメントありがとうございます。
私もカポーティのことは、さして詳しくはなかったのですが、
私の母はこの時代、まさし青春だったので、カポーティのことも
かなり詳しく多少の予備知識を頭に入れて、映画鑑賞に望むことが
できたのはラッキーでした。(^^)

>ホフマンがカポーティに似ているのか良くわかりませんでしたねえ。

本物のカポーティの写真より、フィリップのほうが太っているように
みえましたが、それは愛嬌といったところでしょうか・・

映画の中でも『アラバマ物語』についてのシーンがありましたね。
この映画も、興味がありますが、TUTAYAにあるかどうかが
問題です。相当、古いですもんね。(^^;;;;
by まなてぃ (2006-10-17 18:37) 

まなてぃ

>リンコさんNice&コメントありがとうございます。(^^)
カポーティの伝記のほうを読んでいるんですかね。
情報によると、カポーティと関わった人たちの話から
カポーティの人間像を語る物語とか・・
映画を観てから、この本のほうも少々気になるところ・・です。
読む時間がとれるかなぁああああ!そこが問題だぁ!(^○^)
by まなてぃ (2006-10-17 18:41) 

まなてぃ

>こんばんは、のんたんさん。(^^)コメントありがとうございます。
私も実は、カポーティよりもホフマンのほうが太ってる???(◎◎)
と思いながら、映画を観ました。演技はなかなか悪くないのですが、
外見は、ちょっと違うかなぁあ。という感じです。
『セント・オブ・ア・ウーマン』は、私は未見なのですが、
アル・パチーノの大ファンの友人によると、「本当にもうアル・パチーノ
が格好よくて!映画の中で「香りだけで君を探せる」というセリフに
もう悩殺された」((○(><)○))キャァアア と大騒ぎしていた
ことを思い出しますね。
物語もかなり良いものらしいし、ちょっと触手が動いてしまいますねぇ。
TUTAYAにあるかっ!これが一番の問題かなぁあ。(^^;;;)
by まなてぃ (2006-10-17 18:53) 

まなてぃ

>カツピロさんNiceありがとうございます。(^^)
カツピロさんの言うとおり、フィリップ・シーモア・ホフマンの
お姉言葉に、ウギャァアア!とさけびつつ走りたくなる、その演技を
満喫することができました。(笑)
by まなてぃ (2006-10-25 10:23) 

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