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ロード・オブ・ウォー [映画感想 ら行]

ロード・オブ・ウォー

ロード・オブ・ウォー

  • 出版社/メーカー: 日活
  • 発売日: 2006/06/09
  • メディア: DVD

映画タイトル:ロード・オブ・ウォー
初公開年月 :2005/12/17
監督:アンドリュー・ニコル
脚本:アンドリュー・ニコル
出演:ニコラス・ケイジ   イーサン・ホーク  ブリジット・モイナハン 他
   
■2006.8.30(水) 本日の一言■

夏バテの挙句、私の持病である粉瘤(フンリュウ)が、先週の月曜日に再発した。
できた場所は、毎度おなじみの右足の付け根である。
去年、再発した時は自然治癒で収まったので、今回も収まってくれるかと期待した。
しかし、日に日にヤツ(粉瘤)は2mmくらいの大きさから親指の爪ほどの大きさに
成長はするし、おまけに痛みも去年よりもバージョンアップ!。
そこで自然治癒は諦めよう。で、金曜日に皮膚科に行ってきた。( p_q)ウウ
それから4日間、病院通い。粉瘤治療の点滴生活、で映画三昧はおあずけになった。
そしてやっと!回復の兆しである。粉瘤が小さくなり、来週まで病院はナシ!
万歳!なのである。そこで、さっそくレンタル屋さんに直行してDVDを借りてきた。
今回はニコラス・ケイジ主演の「ロード・オブ・ウォー」である。
この映画、いずれは観てみたいと思っていたのだ。

というわけで、久しぶりの映画の感想は「ロード・オブ・ウォー」である。
やっと粉瘤も小さくなって、回復の兆しもでてきたので元気にいってみよう!\( ̄▽ ̄)/

あらすじは以下のとおり。

ソビエトが崩壊する前にウクライナに生また、ユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)。
少年時代に家族とともにアメリカに渡った。
両親はニューヨークの下町でレストランを開き、ユーリーも家族の手伝いをしながら
細々と生活をする日々。そんなある日、ユーリーはギャング同士の銃撃戦を目撃し、
ギャングの使用した多くの銃弾の数を見て、もしこの銃弾をの商いを始めれば、
今の苦しい生活からも足が抜けるのではないかと考える。
弟のヴィタリーと2人で武器売買の事業を始める。しかし正規の武器商人になるには、
その席は彼には空いていなかった。ユーリーは仕方なく危険と隣り合わせの裏社会の
武器商人の道を選び、天性の才覚を発揮し世界有数の武器商人へと成長していく。
しかし、そんな彼にインターポールのバレンタイン刑事(イーサン・ホーク)が執拗に
捜査を始めだしていた・・・

では感想にいく。
★以降、ネタバレしていきますよ★

このDVDのパッケージからすると武器商人を軸にし、アクションも交えた映画なのかと
思いながら鑑賞を開始したのだが、それは大きな間違いだったようだ。
それどころか、アクションの「ア」の字もこの映画には存在せず、メインに据えられて
いるものは主人公である武器商人 ユーリーの商売日誌といってもいい。
映画の前半は、いかにして一般市民であったユーリーが商品となる武器を手に入れ、
どうやって顧客をつかみ売りさばいていったか・・金の受け取り方法、
イカれた顧客のおだて方、インターポールの取り締まりからの逃れ方、などなど、
彼が一流の武器商人になるまでの道のりが映像として流れ、ユーリー自身の声が、
ナレーターとしての役割を果たし客観的な視点を持って自分の体験を独白するのである。
こういった形で映画が進行してゆくので、 私はこの映画には常に二つの人格をもつ
ユーリーが、存在しているように感じた。
第一の人格のユーリーは、最悪の場合は死があるのを意識し恐怖を感じながら、
武器密輸を家族との生活を保つためにと働く男であり、銃を握り人を殺す事に
恐れを抱き、イカれた顧客と共に商売敵を殺してしまった後に狼狽を見せ、
自分の子供が玩具のピストルを持つことさえ厭わしく感じて、それをゴミ箱へ
捨ててしまう、ごく一般的な人間の心理と父親の人間的部分である。
しかしもう一方のユーリーは、即ちナレーションで自分を語る彼の内なる声の冷静さだ。
この映画は後半にそれを映像として観せることも忘れない。例えば、インターポールの
バレンタインが自分を密輸という罪で追ってきても、したたかに逃げおおせる能力。
顧客が殺されたり、自分が売りつけた武器類で内戦や殺しが行われていても、
それらを事実として受け止める精神力の強さ。
最終的には弟が商売によって内戦の地で目の前で殺された時ですら、彼は冷静で現状を
見極める目をもっていたし、対応に狂いは生じなかった。その場での声や眼差しがやさしい分
だけ、いっそう恐ろしさを感じたシーンでもあった。
こうして武器商人の道を歩んだユーリーは、弟を亡くし、武器を疎んじる妻からも子供と共に
去られてしまい、両親からの愛情も失うことになる。
その経過をえて、二つのユーリーという人格を使い分けていた彼は、一つののユーリーに
なったように思う。即ち、ナレーションで自分を語っていた、何も失うものをもっていない
冷静で冷徹な武器商人のユーリーの誕生となり、バレンタイン刑事に密輸で逮捕された後も、
淡々と自分のその後の処遇について語って聞かせる余裕を見せ、最後のモノローグの
シーンは思い出話を終わらせた彼が、現在という時点に立って、恐ろしい言葉を平然と
言い放ち私はその言葉に恐怖を覚えたのだった。

次に俳優の感想である。

主人公の武器密輸売人のユーリー・オルロフを演じた、ニコラス・ケイジ。
今まで彼の演じた役とは一線を画した、難しい役だったと思う。
少なくとも、4作ほど彼の出演している作品を観たことがあるが、どの映画も
クセはあろうとも、それなりに人の良い部分が見え隠れする役どころが彼には多かった。
しかし今回は、気弱そうでありながら内面は図太いイヤな男を好演している。
恐ろしい顧客に舐められぬよう、精一杯気張ってブラックジョークを飛ばしていた男が、
その後インターポールの刑事へ淡々と自分が釈放される理由を語る男に変貌していく様を
静かに着々と演じ、脱帽モノである。イヤハヤ・・ニコラス・ケイジってウマイ俳優なんだ
と感じさせてもらいました。拍手である。

次、ユーリーを追う刑事ジャック・バレンタイン を演じたイーサン・ホーク。
映画、「テイキング・ライブス」で、気味悪男を好演していた印象が強かったので、
今回の正義の味方役を演じているのが、奇妙な感じがした。
こんな正義の味方よりも、もっとやりがいのある役があったんじゃないの?
という感じである。必死になってユーリーを追う刑事だが、その鬼気迫るシーンが
少なくて、本来の彼の演技ぶりが生かされることなく残念な限りである。
もう少し彼にも名シーンを用意してくれもよさそうなのに・・と思ったほどだ。
次回作に大きく期待したい。

では最後に映画全体の感想を書いておく・・

この映画はよくアメリカが、ハリウッドが上映許可をしたな・・と
先進国にとっては耳の痛い物語だと思う。
武器密輸という映画であるので、残忍なシーンがでてくるかもしれない・・
と鑑賞途中から覚悟をしたが、目を覆うようなことは一度としてなかった。
一つ一つと語られる密売人の日々は、サラリとしていたり、ブラックユーモアであったり
成功であったりするので、途中 暗さを感じることは皆無だった。しかし最終的には
そうした、商売人の成功に対する代償の影が濃くなり、映画のエンディングを迎える時には、
政治や戦争や内戦の裏事情、現実を見せ付けられている。まるでオブラートにくるまれた
苦い薬を飲んだあとのような気分といえばいいか。
久しぶりにやられました、参りました、という感じがいつまでも残った秀作な映画であった。


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コメント 10

noric

ニコラス・ケイジは大体観てますね。
by noric (2006-08-31 19:22) 

こんばんは。この映画はメジャースタジオでは出資してもらえなかったんで、インディーズ会社でのリリースなんですよね。最後の「武器輸出トップ5カ国は国連安全保守理事会の常任理事国である」というような一言が一番ショッキングでした。
by (2006-08-31 21:20) 

まなてぃ

>noricさんNice&コメントありがとうございます。(^^)
ニコラス・ケイジものが、ご贔屓ですか・・
今回のこの映画で、私も彼を観る目が変わりましたよ。
ウマイ役者さんです。これからの作品はちょっと期待して
みてゆきたいですね。
by まなてぃ (2006-09-01 19:40) 

まなてぃ

>katoyasuさんNice&コメントどうもありがとう。(^^)
オープニングから、かなり引き込まれた映画でした。
しかし、成り上がり映画なのにkatoyasuさんの言うとおりの
セリフで、重くショッキングな映画になりました。
メジャースタジオからの映画だったとしたなら、アメリカも
さすが大国の太っ腹!と感心できたのに・・やはりそこまでの
度胸は、メジャー会社にはなかったのですねぇ。
しかし秀作の良い映画でした。インディーズ会社に拍手ですっ!(^^)v
by まなてぃ (2006-09-01 19:45) 

のんたん

私もニコラス・ケイジ好きです。
彼は本当にプライベートとは異なって、映画ではスバラシイ俳優だと
思います。なんでしょうか、あの切ない目。(単にタレ目タレ眉?)
どの役をやっても、すごく説得力があると思うんです。
私は「バーディ」が忘れられません。
髪の毛もあってスリムでハンサムでしたから、びっくりしましたけど^0^
by のんたん (2006-09-03 03:48) 

まなてぃ

>のんたんさん、こんにちは。コメントありがとうござます。(^^)
ニコラス・ケイジはプライベートでは、あまりいい噂を聞いたことが
確かにありませんねぇ。
でも今回観たこの映画のおかげで、かなり彼を見る目が
変わりましたね。自分の中でウマイ俳優さんの一人に入りました。
私は「バーディ」という映画をまだ観たことが実はないのですよ。
しかしっ!驚いたのは彼がスリムなんですか???(@@)
信じられない!髪の毛があるのは、ちょっと想像できるかな。(笑)

次回作、「ワールド・トレードセンター」も気になるところ。
名演技を期待したいですね。(^^)
by まなてぃ (2006-09-03 13:24) 

のんたん

そうなんです!スリムなんです!そして髪の毛あると別人~!って
くらいハンサムですよ~!!イタリア系(ですよね?)の色男です!
マシュー・モディーンがいいですねえ。ぜひぜひご覧になってください^0^
by のんたん (2006-09-03 18:39) 

まなてぃ

>のんたんさん、再びのコメントありがとうございます。(^^)
『バーディ』、さっそく検索でいろいろ調べてみました。
映画の批評もなかなか高く良い作品のようで、かなり期待
できそうですね。あとはレンタルショップに『バーディ』が
あることを願うばかりですよ。(^^)v
by まなてぃ (2006-09-03 23:07) 

まなてぃ

シロタさん、ご訪問&niceどうもありがとう。(^^)
by まなてぃ (2010-04-30 22:38) 

ETCマンツーマン英会話

「ロード・オブ・ウォー」見ました。

>政治や戦争や内戦の裏事情、現実を見せ付けられている。

表層的な事柄ばかりに気をとられて、思考が及ばない部分ですね。
武器取引について考えるきっかけをもらった良作との出会いに感謝です。
by ETCマンツーマン英会話 (2014-08-05 13:37) 

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