シービスケット [映画感想 さ行]
映画タイトル:シービスケット
初公開年月 :2004/01/24
監督: ゲイリー・ロス
脚本: ゲイリー・ロス
出演: トビー・マグワイア ジェフ・ブリッジス クリス・クーパー 他
■2006.8.24(木) 本日の一言■
甲子園のTV中継を観たり、バタバタと私事ごとを片付けたりと、ゆっくり映画を
観ている時間がなかなかとれなかった。
そろそろ禁断症状も出てきたことだし、レンタル屋に行くかな・・と思っていたところ、
部署内で流行しているDVDの貸し借りにあやかることができた。
今回は、プログラマーのIさんから、DVD「シービスケット」を借りることに。
Iさんは大変な馬&競馬好きで、普段は物静かな人なのであるが、ひとたび馬の話題を
しようものなら、永遠と馬の素晴らしさを語れる人でもある。
今回、貸してくれるにあたっても「馬がね・・いいんですよ・・馬が・・」と言う。
「馬がよくて買ったんですね、このDVDも」と私が尋ねると
「はい・・馬モノは観るんですよ・・」と即答。
「ハハハ・・そうですか・・」(^^;;)
物語はどうだったのか?聞きたかったが、馬の語りで終始しそうだったので、
ありがたく借りて帰宅した。予告編では感動モノの感じがしたけれど、結末はいかに・・
「シービスケット」は今回が初鑑賞とあいなった。
あらすじは以下のような感じである。
時代は1929年、アメリカは株の大暴落で大恐慌時代に入る。
資産家の息子だったジョニー・レッド・ポラード (トビー・マグワイア )の家も
その煽りをうけて、一家離散の道を歩み、ジョニーは馬の世話の腕を買われて、
競馬の世界へ足を踏み入れる。また一方、自転車屋から自動車ディーラーとして
成功を収めたハワード(ジェフ・ブリッジス)は、最愛の息子を自分の不用意な言葉で、
交通事故で亡くし、妻にも去られてしまう。失意の中、彼は慰安旅行中に出会った
女性マーセラ(エリザベス・バンクス )と結婚。そして、乗馬の愛好家である
彼女に影響を受け、競馬の世界に傾倒し、馬に深い愛情を注ぐクリス(トム・スミス)
と知り合い、彼の馬に対する考えに共感し、彼を調教師として雇うことにする。
その後、クリスは小柄で気性の荒いサラブレッド(シービスケット)の才能に目を付け、
ハワードにその馬を購入するよう言う。誰もが乗りこなすことが難しい馬の騎手に、
気が強く、喧嘩っ早い男、レッドが選ばれたのだったが・・
では感想にいってみようか。
★以降、ネタバレしていきますよ★
馬好きのIさんの言うとおり、馬がいいな・・の映画である。
しかし、その馬は最初から出てくるわけではない。映画の始まりの30分くらいは、
資産家のハワードや資産家の息子として生まれ育ったレッドの幸福な生活と、
その後に起こった大恐慌が、いかにアメリカの歴史において大きな打撃を国民に
与えたかが描かれていた。しかし私は日本人。このあたりのシーンに共感することは
なかった。正直にいって、肝心要の「シービスケット」という馬が一向に出てこないことや、
レッドが馬の世話役になった筈なのにも関わらず、金稼ぎのためにボクシングの試合を
して小銭を稼ぐ姿などが画面を占拠し、そのせいで随分と間ノビした映画だなぁ・・という
ジレったさを感じだしたオープニングだった。ずっとこの調子で映画が続くのかなと(; ̄ー ̄)
諦めに似た思いがよぎった頃に、ハワードが調教師として雇うクリスが いかに馬を扱うのが
うまく、馬の生命を生かすことにかけた人間であることが描かれ、シービスケットの馬主と
なるハワードと知り合い、雇われることになるあたりから、この映画がやっと呼吸をし、
走りだす感覚がでてきたように思う。こうした過程を得てやっと主役の馬となる
「シービスケット」が 登場し、ボケた印象でしかなかった主役のレッドの活躍の場が
表現されてゆくことになる。
人間関係の核となる人物は、馬主、調教師、騎手、そして馬主の女房といったところ。
彼らは生き方は不器用ではあるが、人間的には良い人たちばかりの構成である。よって、
少々の葛藤はあるものの互いに理解しあい、これから起こるであろう困難にもきちんと
立ち向かってゆける術を持ち合わせていたので、あまり大きな騒ぎがでてくることはない。
騎手であるレッドが足の骨折をした後でさえ、見所になるような事件にはならないのだ。
レッドは話わかりの良い青年に成長してしまい、自分の代役でシービスケットに乗る
騎手に対して、馬の特徴や性質や勝ちレースにもってゆく操縦術を教えて彼らを優勝に
導かせてゆくという流れになっており、そのせいで、馬のレース以外にはハラハラ感が
皆無となってしまった。
楽しい部分といえば、小柄で気性の荒い馬、シービスケットの練習風景や
レッドが馬に対して語る暖かな言葉、そして何より馬のレースのである。
馬同士が空間をまったく作らずにダンゴ状になりながら、猛スピードで走り抜けてゆく
ところは格好がよく、土を蹴り走る馬たちの蹄の「ドドッ・ドドッ・ドドッ」という音が
生命力を感じさせて まことに心地良い。このシーンばかりは「あぁ映画館で観たら、
さぞかし迫力で美しいシーンだったろうな・・」と、くやしい思いをするほど秀逸なものであった。
次に俳優の感想である。
主人公のジョニー・レッド・ポラードを演じた、トビー・マグワイア。
スパイダー・マンで主役を演じたことで、有名になった彼である。
気性が荒い性格の時代のレッドを演じたときは、お・・こういった激しい役も演じられる
のかと、フフフ(^m^)モードで観ていたのだが、後半の役どころの、精神的にも成長をした
穏やかなレッドになると、スパイダーマンを演じた彼との役と似たような演技で
少々物足りなさを感じたように思う。
次、馬主のハワードを演じたジェフ・ブリッジス。
息子を亡くして失意の中にいた時のハワードと、新たな奥さんをもらい、人生を建て直し
嬉々として競馬に力を注いでゆくハワードの心理の演じ分けが見事にできた役者さんである。
全体の流れを読んで、演じられるところ・・ウマイの一語に尽きる。通常だとこういった
親切な役どころは、埋没してしまうのだが、存在感もぬからずだしていてお見事だった。
次、馬をこよなく愛する調教師クリスの役を演じたトム・スミス。
彼自身が妙に存在感のある役者さんである、あの鋭い眼差しの演技が大変良いのだ。
地味な役どころなのだが、シーンごとの役割が大変おいしい。
頑固で寡黙で馬やレースに対して真摯であり続けるクリスの役も、難なく演じ切っている。
この映画で一番印象に残っているといってもいい。もうすぐ公開される「カポーティ」にも
出演しているしで、こちらも大変楽しみである。
では最後に映画全体の感想を書いておく・・
シンプルでわかりやすい映画である。前半のアメリカ大恐慌を語る部分にダレ感や共感できる
部分はないけれども、後半は案外とサラリとテンポよく物語が進み、爽やかな感動と共に
馬の美しさ、力強さを本当に堪能できる映画だと思う。
エンディングは、アメリカ映画にしては珍しく、シービスケットが優勝するであろう・・
ということを匂わせて終わるように作ってある。私はてっきり、シービスケットが
一位でゴールをし、馬主や客たちとの歓声に包まれて終わるものなのかと思っていたので
意外な幕引きに、「あれ・・これで お終いなの?」という感じでエンディングロールを
見ることとなった。しかしその意外な幕引きも悪い印象はない。観終えたときには、
全ては馬(シービスケット)という縁に導かれて・・ここまできた。という
暖かく静かな気持ちになることができた。
単純でありながら、人間同士の信頼関係と馬に対する人間の愛情や情熱を描いた作品。
思っていたよりも、なかなか良質な感動をもらえた映画だった。
こんにちは。私は競馬好きでもないですが、この映画は素直に楽しめました。アメリカはこういったサクセスストーリーが好きですね。トビー・マグワイアはこの映画の撮影で背中を怪我して、次の『スパイダーマン2』の出演を渋って、出演料を上げさせようとしたって話が有名ですよね~(笑)。
by (2006-08-27 09:44)
>noricさんNiceありがとうございます。
またそちらにもうかがわせていただきますね。(^^)
by まなてぃ (2006-08-29 12:38)
>katoyasuさん、こんにちは。Nice&コメントありがとうございます。
馬を交えた、さわやかなサクセスストーリーでしたねぇ。
しかし、トビー・マグワイア・・出世作の出演を渋って出演料を
あげさせるとは・・・恐れ入りました。(笑)
でも出演したということは・・沢山もらえたのかなぁああ。(^^;;)
by まなてぃ (2006-08-29 12:40)