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アマデウス ディレクターズカット版 [映画感想 あ行]

アマデウス ディレクターズカット スペシャル・エディション

アマデウス ディレクターズカット スペシャル・エディション

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2006/09/08
  • メディア: DVD


映画タイトル:アマデウス/ディレクターズカット版
初公開年月 : 1985/02/
監督: ミロス・フォアマン
脚本: ピーター・シェイファー
出演: F・マーレイ・エイブラハム  トム・ハルス  エリザベス・ベリッジ 他
   
■2006.8.13(日) 本日の一言■

昨日は「ユナイテッド93」の公開日であった。だが、空は雷をひきいた大雨が
今にも振りだしそうだったのと、映画の内容が内容だけに観る勇気がでてこず、
自宅でおとなしくDVD鑑賞をすることにした。
観たDVDはディレクターズカット版の「アマデウス」。
3時間にもわたる超大作である。この映画が公開された頃、私はまだ高校生で
学校の視聴覚教室で観たのが初鑑賞だった。その後、この映画に非常にハマり
数え切れないほど、何度もレンタルビデオで観たが、ここ10年ほど観ておらず、
ディレクターズカット版は今回が初めての鑑賞になる。

あらすじは以下のようなもの。

かってオーストリアの宮廷作曲家であったサリエリ(F・マーレイ・エイブラハム)は
晩年に入り、自宅で「私がモーツァルトを殺した」と叫び、自殺未遂をする。
病院に担ぎ込まれ、精神病棟の一室に身をよせたサリエリの懺悔を聞くために、
1人の神父が呼び寄せられる。サリエリは神父に向かって、己がいかに、神を讃える
曲を書きたかったかを語り、またモーツァルト(トム・ハルス)の書いた曲を愛し、
理解し、彼の個性を憎み、彼の暗殺を企て、殺したいきさつを語りだすのだった・・・

では感想にいってみる。
★以降、ネタバレしていきますよ★

「アマデウス」は、作りモノとはいえ、私にとって世界歴史とヨーロッパの世界を
初めてこの目で観させてもらった映画である。それまで私が観てきた映画の場所と
いえば、ほぼ99%の確率でアメリカであり、ヨーロッパが舞台の映画というのは
あまり観る機会がなかった。よってスクリーンに映し出される、街並や宮廷の数々、
カツラをかぶった男たち、キュウキュウにウェストをしめて、フリルのついた
ドレスを身にまとい扇をもつ女たちというのは、マンガの「ベルサイユのばら」でこそ
そういった世界があると知ってはいても、実写版のヨーロッパの宮廷の世界というのは
なにもかもが初めてで、美しく映え、それだけで心躍らせてもらい、今回の鑑賞でも
その楽しさは相変わらずだった。映画を流れるBGMに関しても、映画のコマ割と
音楽の小節数をばっちりと合わせてくる絶妙さは、口が開くばかりであった。もちろん
曲はクラシックファンでも、納得のいく名曲ぞろいだと思う。オープニングで流れる
交響曲25番は妖しい音づかいで、これから始まる映画のミステリー的部分を匂わす
ことに成功しているし、次々と繰り出される曲たちは、映像の中にあるモーツァルトの
精神状態を助演して素晴らしい限りであった。
次に物語についてである。初めてこの映画を観たときには、ただただ、サリエリが
モーツァルトに対して殺意を抱いてゆく、くだりの緻密さに感心するばかりだったのだが、
何度か観ていくうちに、よく感じることは、モーツァルトが父を独りで死なせてしまった
後悔故に、オペラ「ドン・ジョバンニ」を書き、サリエリが被る(かってパーティで父が
被っていた)黒い仮面に脅え、死への近道を駆け降りていったのか、という理由が
今ひとつ明確なものとして、自分に響いてこなくなったような気がする。
もう少し父が息子にかけた熱烈なる音楽に対する教育や、愛情、それに答えてきた
息子、モーツァルトの愛情や親子関係を描いたほうが、サリエリが突く、モーツァルトの
唯一のアキレス腱が、父であったことを証明できたのではないだろうか。
今回、ディレクターズカット版を観るにあたって、そういった部分が追加されてくるのか
と思っていたが、父と息子に関することについては、公開当時そのままであった。
多少の違いといえば、モーツァルトが非常にお金に瀕していた状態が描かれていたことと、
サリエリがモーツァルトに対して、行った仕打ちの内容が細かに描かれていたことである。
これらのシーンはあればあるで、観てしまうものであったが、絶対にこの映画に必要で
あったかと問われれば、秀逸なシーンや必要なシーンでもなかったというのが、
私の正直な感想である。しかし、こういった不満を少々ならべはしても、やはり隙間なく
作られた完成度の高い映画で、今回も時間を忘れ、あっという間の鑑賞になったのだった。

次に俳優の感想である。
まずは、主人公サリエリを演じたF・マーレイ・エイブラハム。
この俳優さんは「薔薇の名前」という映画で、宗教裁判官を演じ、宗教に偏狭している
役を怪演した人である。この物語の負の部分を演じきり、作られたとは思えぬ、身のこなし、
目力や口はしの上げ下げで、誇り高くはあるが、己の才能を見限り苦しい人生を送った
サリエリを見事に演じて、感心するばかりである。
しかし最近その姿をとんとみないのは、やはりあまりの怪演ぶりなのだろうか?
提供される役が、凄まじい個性をもっていないと彼に食らい尽くされてしまうのかもしれない。
他の役でも観てみたいと切に願わずにはいられない役者さんだ。どこの監督さんでもいい、
彼を起用してくれないものだろうか改めて思った。

次、モーツァルトを演じた、トム・ハルス。
負の部分を演じたサリエリに食い尽くされた感のある、トム・ハルスであるが、
モーツァルトの才能、正の部分を演じる人なくして、この映画はここまで、おもしろくは
できなかった筈だ。司教が主催するパーティで二十歳を過ぎても子供のように女を追い回し、
下品でありながら、音楽にだけは真摯でありつづけたモーツァルトを好演している。
陽気な明るさや、勘に触る高笑い、街中をスキップする姿を嬉々とやってのける演技力には
底力を感じさせてもらえる。彼も、とんと、この映画以降、姿をみなくなったが、舞台や
ディズニーのアニメ「ノートルダムの鐘」などに出演しているらしい。
ぜひその演技力をまた再び、映画のスクリーンで観せてもらえる日が来ることを望まずには
いられない名優さんである。

最後に映画全体の感想を書いておく・・

公開当時、「アマデウス」を観るまで、私は嫉妬心というものは女の専売特許であると
信じており、男は女ほどの嫉妬心があるとは、露とも思わず生きてきていた。
そういう女子高生だった私が、その頃、思っていた男同士の才能の戦いというものは、
相手の才能が自分の才能を超えたと認めた時は、才能を讃え、暖かく相手を
送り出すものと信じて疑わなかったのだ。
それだけに、この映画を観終えたあとの感想はまさしく「目から鱗が落ちた」という
感慨以外になかった。男には男の妬む想いというものがあるのだ。と消化したのだ。
また言葉は悪いが「馬鹿と天才紙一重」というモノを真のあたりに観たのも、初めてだった。
それまでは、天才というのは、天から授かった能力と共に行動も立派な人のことをさすのだと
思っていたのだが、そうとは限らず、いやむしろ一芸に秀でた人間が持つ破綻性を示して
くれたのも、この映画であったのだ。
こうして時がたち、何度もこの「アマデウス」を観てもこの2つの目から鱗が落ちるという
感覚が、色あせることはない。むしろ年齢をかさねた今のほうが、より感触は生々しい。
選ばれし才能、選ばれし者がいるという事実は社会にでてからのほうが、痛感させられる
ことが多いからだ。しかし凡庸だの凡人だと嘆くことはないのだ。
天才の書いたもの、天才と称される者たちが作るものを歓迎し、喜び、味わい
彼らの苦労もしらずに評価することができるのは、凡人たちであるからなのだ。
サリエリの気持ちは、わからなくはない、しかし凡人の一人として言うが、サリエリは
天才ではなかったかもしれないが、充分な名声と音楽の才能を当時は認めてもらえた
一人ではないかと思うのだ。自分の実力に見合った人生を送り、幸せになることも
彼は選べたはずなのだ。それを思う時、映画を埋め尽くすモーツァルトの明るい音色と共に
彼の悲劇が口の中に苦味となって広がってくる。本当に良い映画だと思う。
上映時間は3時間と長いので、時間がたっぷりある時に、どっぷりとこの世界に浸って
観てもらいたい。今回の鑑賞でも、私は充分すぎるくらいの満足をもらった。
本当に、おいしゅうございました。ごちそうさまである。(o ̄∇ ̄o)y-~~ フゥウ・・・。


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コメント 5

tamapin

お邪魔します。
撮影中、主役の二人は犬猿の仲だったと記事にあって、自然なのか緊張感を保つためなのかプロの俳優のありように感心したのを思い出しました。サントラも買いました(レコードですよ!)
今、10枚3,000円のモーツァルトCDに映画の曲を見つけると懐かしくなります。
クリームをなめる下僕(やーめーてー)とか安い棺桶(&塩
)とか変なところを良く覚えています。
福山庸治さんのマンガ「マドモアゼル・モーツァルト」はご覧になりましたか? 音楽座のミュージカルにもなった作品ですが、こちらもなかなか素敵な推理ですよ。私の中ではこの二つが対になってアマデウス・モーツァルト像が造られてしまってます^^
by tamapin (2006-08-13 21:21) 

まなてぃ

>びんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。(^^)
私もこの映画を観たあとは、なんとか安くで、これらの曲を聴きたい
ものだと、音楽の先生や、その当時、習っていたピアノの先生に
ゴマをすってはテープに曲をダビングしてもらいました。
先生にお願いごとをしたことなど、あれが最初で最後のことでしたが、
当時、学生だった私は、レコードを買うお金がなかったのですよ。
トホホでやんす。・・(^^;;;)
マンガ「マドモアゼル・モーツァルト」は、読んだことがないですね。
まだ、売られていたり、マンガ喫茶(ここにあると一番ありがたい!)
なんかにあると読めますね。なければ、BOOK OFFにでかけて
立ち読みかなぁ。(笑)
by まなてぃ (2006-08-14 09:57) 

こんばんは。この映画にディレクターズ・カットがあったんですねえ。知りませんでした。ぜひ観てみたいものです。この映画を観るたびに、本物のモーツァルトはこんなに無邪気だったのかといつも思ってしまいます。あんなに凄い作曲家なのに(笑)。
by (2006-08-15 20:31) 

まなてぃ

>katoyasuさん、Nice&コメントありがとうございます。(^^)
私もレンタル屋で初めて、ディレクターズカット版があることを
知りましたね。今年はモーツァルトの生誕?だったかな?の
250周年?記念だったので、もう少し宣伝をしても良いのにとは
思いましたね。この映画のモーツァルト像は確かに、衝撃的でした。
数々の名曲を思うと、ちょっと信じられない感じもありますよねぇ。
by まなてぃ (2006-08-18 13:56) 

まなてぃ

>noricさん、たびたびのNice、ありがとうございます。
また遊びにきてくださいね。
by まなてぃ (2006-08-18 13:57) 

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