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復讐するは我にあり [映画感想 は行]

復讐するは我にあり デジタルリマスター版

復讐するは我にあり デジタルリマスター版

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2004/03/25
  • メディア: DVD



■2006.6.2(金) 本日の一言■

本日のブログは、いつもの趣旨と違って、映画についての思い出話である。

5月31日の我が家の夕飯時に、今村昌平監督という人が亡くなったと
ニュースで知った。
「今村監督?誰?」「『うなぎ』を撮った監督だってよ」
「『楢山節考』を撮った人だって、映画は観てないけど何か映画賞をとったね」
「一本もこの監督の映画は観たことないねぇ」
と呑気な会話を家族と行う。

翌朝、朝刊を読みながら朝食。これも日課。そこに今村昌平監督への
追悼文が掲載されており、今まで彼が撮影した映画のタイトルが並んでいた。
その中に「復讐するは我にあり」のタイトルがあったのだ。
「げっ・・(@@)この映画の監督さんだったのか!」と思わず呟き、
「そうか・・亡くなってしまったのか・・」と嘆息した。

今村監督が撮った「復讐するは我にあり」という映画は、私が初めて映画館へ
一人ででかけて観た映画である。
とは言っても、初めから「復讐する~」目当てで映画館へ行ったわけではない。
当時、私は黒沢明監督の「影武者」が観たくて、観たくてしょうがなく
わざわざお年玉を残して、親にも学校にも内緒で映画館へでかけたのだ。
むろん親に観に行きたいと せがみもした。しかし「大人の映画だから、まだ早い」
と言われたのだ。今、思えば当然の意見だ。
しかし私は諦めが悪かったし、歴史で習った武田信玄が主役の映画を観たかったのだ。

当時 私は背丈も大きく、クラスでの あだ名は「ママ」と言われるくらい
老けた小学生だった。電車に乗って、小学生用の切符を駅員に渡すと、
よく「本当に小学生か?」と改札口で止められることも多々あった。
ということは・・「映画館で大人料金さえ支払えば、誰にも疑われなく、一人で大人の
顔をして映画を観れるのではないだろうか?」と考えた。その頃の私は今思うと
背伸びをして、大人ぶり、一人で映画を観てみたかったのだろう。

だが実際に観れたのは「影武者」ではなかった。
「影武者」は満席で立ち見だったのだ。次の上映はとても子供が観るには許されぬ
時間だった。かといって再び一人で映画館にくる勇気がなかった私は隣の映画館で上映
されていた「復讐するは我にあり」を観ることにしたのだった。

「復讐するは我にあり」は、大人ぶっている小学生の私を打ちのめすことなど、
簡単にやれるという映画だった。今ならばR15指定にされてもおかしくはなかったと思う。
映画の主役である緒方拳が演じる役は連続殺人犯であり、映画の画面からでてくるのは、
嘘と強奪と殺人と逃亡と濡れ場と葛藤・・・(@@)の連続だった。そして街、風景、家々、
小道具の何もかもがセットには とうてい見えなかった、使い古されていて、くたびれており、
恐ろしいほどの現実感があり、また緒方拳を助演する俳優陣は、小川真由美、三國連太郎、と
その名前を今、聞いただけでも確かな演技力と濃い個性をもったひとたちばかりである。
当然のことながら、観終わった時には、その凄惨さに気分が悪くなっていた。
「大人の世界というのは、わけがわからない・・なんと恐ろしい世界なのだろう。」という思いと、
まだお前は何も知らない子供なのだ、とガツンと突きつけられたようなショック感が、いつまでも
残った。

この映画を観終わった数日後、どこからどうバレたのか、私は小学校の担任の先生に
呼び出されて、子供のくせに映画館へいったことについて、こっぴどく叱られた。
親にも もちろん叱られた。しかし観た映画は飽くまで「影武者」で押し通した。
もし「復讐するは我にあり」を観たと正直に懺悔していたとしたら、叱られる内容が倍に
なることくらいは、子供の私でも充分にわかっていたからだった。

現在、「復讐するは我にあり」はDVD化されている。日本の名画に属すると作品だと思う。
いまだに私は緒方拳をTVなどで観るたび、この映画のことを思い出す。
最近、良い人の役が多い、緒方拳であるが、いくら良い人の演技をみても、その笑顔の奥に、
実は何かを隠している悪役なのではないか?と疑ってかかってしまう。それほどの怪演だった。
こうして時が経ち、私は大人になって誰かれ憚ることなく、どんな映画でも好き放題みれる
ような年齢になっているが、この映画については、二度目の鑑賞をしていない。
正直にいえば「復讐するは我にあり」にある救いのない人間の業、行動、残忍さ、洗っても
洗っても いつまでも落ちず、血のシミのように残るモノを再び直視する勇気がないのだ。
本当に心と体の芯がゾッとさせられる映画だ。

私は普段、監督で映画を選んだり、監督に固着をしたりしない。
監督だけをほめたり、けなしたりするほど映画通でもない。今村昌平監督についても、
たまたま、新聞で「復讐するは~」と監督がリンクしていたことを知ったにすぎない。
だが、この一作を忘れることはないだろう。この映画を想うと、様々な映像が蘇り、
やはり その恐ろしさ身を固くし、そして子供だった当時を思い出すことができるのだ。
惜しい人を亡くしたと思う。ありふれた言葉になるが、心から ご冥福をお祈りする。


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コメント 4

のんたん

小学生で、この映画ですかぁ!ショックが強かったことでしょう!
とはいえ・・・私、この映画は見たことがなく、もしテレビであっても
見ないような気がするのです。
まなてぃさんが書かれていたように、なんか色んな意味で凄すぎる
気がするからです。そしてそれは当たってるみたいですね。
記事を読んで思い出しましたのですが、緒方拳さん。
この方は若い時は確かに殺気立った気配がありました。怖かった。
今では人のいいおじい?さんの役が多いですね。
この方の書道の作品展でご本人を見たことがありますが、あの怖さと
も、人のよさそうなじぃじ然とも全く違った静かで穏やかな佇まいの方で
ああーこういう人が役者なんだなあ!って強く思ったこと覚えています。
by のんたん (2006-06-04 02:22) 

まなてぃ

のりたんさん、コメントありがとう。(^^)/
>この映画は見たことがなく、もしテレビであっても
>見ないような気がするのです。なんか色んな意味で凄すぎる

見て見てとお薦めできない名画ってあるのだなと。(^^;)
ホントいろんな意味で凄かったです。ハイ。
書道の作品展で緒方拳をみたことがあるとは、いいなぁ!
私も見てみたい!生!緒方拳<パンダみたいにいうなって・・(^^)ヾ
静かで穏やかな佇まいの方・・そして裏ではあの演技。
イヤハヤ、ホレてしまいそうですね。
by まなてぃ (2006-06-04 21:30) 

Bon

たまたまレンタルで「復讐するは我にあり」を昨日鑑賞しました。ずっと以前、多分、TVで放送されたのを部分的に見て、浜松で京大教授を名のっている場面だけを覚えていました。昨日はじっくり全編鑑賞しました。で、そのタイトル名に疑問を抱きネットで検索中、このサイトにたどり着きました。
映画の内容自体はさておき、あなたの体験談には共感できます。的確です。昨日は娘(小学5年生)が不在で良かったとつくづく思いました。
by Bon (2010-04-30 10:42) 

まなてぃ

Bonさん、こんばんは。はじめまして(^^)
コメントどうもありがとうございます。

もう約4年前に書いた文章だったので、書いたことは覚えていても、
このページからは、すっかり遠ざかっていました。

Bonさんがコメントを残してくれたおかげで、
久しぶりに『復讐するは我にあり』の文章を自分でも読むことに
なりました(笑)。いやはや・・懐かしい。

>レンタルで「復讐するは我にあり」を昨日鑑賞しました。

オオォオ!鑑賞しましたか。
私は未だに2度目の鑑賞はできていないんです。
いい大人なんですが、どーにも恐ろしくて・・。orz...トホホ

>昨日は娘(小学5年生)が不在で良かったとつくづく思いました。

このコメントはスゴク私は共感できますよん。(笑)
子供のときに観ておきながら、言うのもなにですが・・。
この映画は子供のときは、開けてはいかん扉のような作品なのでしょう。


by まなてぃ (2010-04-30 22:32) 

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